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2016.12.26
年の暮れに今年を振りかえってみると…2016年は出張の多い年でした。四季の家工房は原則としてクルマで1時間圏内を業務エリアとしていて、それはこのホームページ内でも謳っています。なぜかと言うと、この仕事は「建てたら終わり」ではないからで、メンテナンスや突発的なお客様の困りごとにも対応できるようにという思いで決めた「1時間圏内」なのです。

で、なんで出張?…と言うと、今回いただいたお仕事は一般のお客様の住まいをつくるのではなく、「くつろぎ」を提供する商業スペースをつくるための、いわゆる「B to B」のお仕事でした。せっかく呼んでいただいたのでお役に立てるのならばという気持ちと、普段あまりやらないようなアミューズメントスペースみたいな空間もつくってみたいという気持ちと両方で、後先考えずにお引き受けしてしまったのです。

それが浜松でした。当初は2〜3週間くらいとの気持ちで現地に入ったのですが、いろいろと仕事が増えたりなんだりで結局5週間を浜松で過ごしました。でも、けっこう楽しかったですよ。仕事も刺激的だし、食べ物もおいしかったし、施主である企業の担当の方やデザインをした設計の方、特注家具の設計施工をしている業者の方たちと、一杯やりながら語り合うのは本当に貴重な時間でした。

施主さんにしても僕たち作り手にしても、真剣さと言う意味では家をつくるのも商業施設をつくるのも変わりはないのですが、これからお金を稼ぐための器をつくるのですから、こだわりのポイントや判断のモノサシが全然違うんです。いきおい鼻息も荒くなるし目もギラつくのですが、良い意味で本当に刺激的だったのです。

それと「ここは体をぶつけるかもしれないから角を丸くしよう」とか「手で触れる可能性がある部分への配慮」とか、違う目線でのいろいろな気配りのしかたを学びました。何せ老若男女が裸でくつろぐ空間なので、いくら配慮しても配慮しすぎはありません。

で、その流れで…中国の武漢という街まで出稼ぎにも行ってきました。来年もまたいろいろな場所に呼んでもらえそうです。せっかくの良い機会なので新たに見分を広めて、良いところは学び普段の仕事にもフィードバックできたら良いなぁと思います。

この一年を漢字一文字にすると?って問いが流行ってますが、それで言うと今年の四季の家工房は「動」だったかもしれません。2016年、たいへんお世話になりました。どうぞ、良いお年をお迎えください。
小野
2016.12.21
「四季の家工房の特徴はなんですか?」というご質問を時々お受けすることがあります。答えは一つではないので、時間がたっぷりある時はいろいろな施工例を参照しながら具体的にご説明するのですが、端的に一言でお答えしなくてはいけない時はいつも次のようにお答えするようにしています。

「僕たちは大工ですから、手を使って一つ一つお客様が欲しいモノを、形にすることができます」
…もちろん、作れないモノもありますし、お客様の言った通りに作ることが決して正解でないこともあるので、「イメージ通りに暮らせるようなしつらえを一緒に考える」と言った方が良いのかもしれません。今年ご依頼いただいたキッチンのリフォームで、四季の家工房の特徴をたっぷりご提供できた案件があるので、施工事例に追加する前ですがちょこっとご紹介させていただきます。

キッチンリフォーム前キッチンリフォーム前まずはビフォーの写真です。見た通り、キッチンそのものは無垢の木材をたくさん使ったきれいなキッチンだったのですが、お料理好きな奥さんにとっては、使い勝手の面で改善したいいくつかのポイントがあり、食洗器などいくつかの設備器具が寿命を迎えたのをきっかけに今回のリフォームになりました。

リフォームの大きな方針としては、間仕切り壁をなくしてキッチンとダイニングスペースを一つの空間にすること、そして、中央にパンをこねたり配膳したりするスペースとしてアイランドカウンターを設置し、できればミニシンクもつけたい…ということでした。

空間を印象付ける意匠のポイントとしては「厨房」のイメージと「くつろぎ」のスペースの共存で、現況の間取りではこの相反するイメージの切り替えとして間仕切り壁という物理的なバリアーがありましたが、今回のリフォームでは何か別のアイデアでひとつの空間を使い分けしなくてはなりません。そのための工夫が必要です。

さらにL字型のレイアウトに付きものの収納的に効率の悪い部分をなくして、適材を適所に配置する収納の機能的なレイアウトが要求されました。しかも難しいのは、現在お使いのキッチンのキャビネットなどはできる限り再利用したいとのこと…全て解体撤去してゼロから作るのでしたらかえって簡単なのですが、新旧織り交ぜて機能的にも意匠的にもワンランク上を目指すのですから、よっぽど考えてかからないと全てを丸く納めることはできません。う〜ん、これは大変な課題をいただきました!…と同時に、こんなに条件の厳しいご依頼をいただけるのは「それだけお客様から信頼されているのだなぁ」と腕が鳴るわけです。

条件はこれだけではありません。例えば、鍋やお皿の収納でも、それぞれの寸法を測った上で使用頻度によって収納位置を考えたりします。また、隠して収納する部分と見せて収納する部分を考えたり、重さによて棚の強度を検討したり、奥さんが使う部分とご家族全員が使う部分で動線を分けたり、調理家電とコンセントの位置関係など、細部にわたり調整する部分はたくさんあります…。

一旦はまとまったかに見えたプランも、ひとつ訂正をすると他の部分が納まりつかなくなって、影響が影響を呼んでまたイチからやり直し…なんてことが一度や二度ではありませんでした。もちろん、これらの条件が物理的に納まるのは当然ですが、その上で美しくまとまっていないとせっかくのリフォームが台無しになってしまいます。だからボツ案の山を築いてしまうのですが、でもそのくらいのことでギブアップするほどこちらもメンタル弱くはないので、「これ以上は案は浮かびません」とは決して言わないのです。

そんな大変なプランニング作業の中でとても助かったことは、奥さんの「こういう風にキッチンを使いたい」という明確な思いが一度もぶれなかったことです。このへんが冒頭の「欲しいモノを形にする」とつながるのですが、何度も打合せとプランニングを重ねることでお客様の思いが僕の中に一度入力され、僕から出力されたプランを見てお客様もご自身のイメージとすり合わせができるようになるのだと思います。

そんな産みの苦しみを経て出来上がったのが、こちらのキッチンです。「戦闘モード」で厨房を使う時とダイニングでの「くつろぎモード」との切り替えは、照明器具を使い分けることで解決しました。細かい部分の説明はいずれ施工事例に追加しますので、そちらをお楽しみにお待ちください。

キッチンリフォーム後 キッチンリフォーム後 キッチンリフォーム後
小野
2016.12.19
前回の日記で「いろいろなご要望にお応えできるように、日々、モノづくりアンテナは張り巡らせてる」と書きましたが、先日ちょっと変わったご依頼をいただいたんで、また少しアンテナが伸びたみたいです。そんな話をしてみます。

水栓金具のパレットこれ何かと言うと…ある水栓金具のメーカーさんで使うパレットなのです。水栓金具のパーツを作るのは完全にオートメーション化された機械で、穴をあけたり、表面を削ったり、ネジを切ったりという全工程を行うのですが、その機械に送り込むために素材となる金属塊をセットするのは人間の手で行います。

そのセット作業を正確で迅速に行うための冶具が、このパレットなのです。あらかたの形状に一次加工をされた金属塊を、たこ焼き鉄板の穴のようなパレットにセットして加工機械に送りこむと、あとは機械の方で素材を掴んで自動的にパーツが出来上がるんです。木製のパレットなのですが、工場でヘビーに使うのですから精度だけではなくそれなりの強度も必要なパレットです。

…と言うような条件で、用途は理解しました。材料の選定もOKです。で、「どうやって作るか」が問題です。まずは自分の手で作ることを前提に考えてみます。困った時は、まずは出入りの道具屋さんのコウケツ機工さんに相談です。刃物の直径や切り刃部分の長さ、ガイドとなるローラーの寸法など、現物やカタログを見ながら工作手順を考えるのですが、どうにもスッキリ解決しません。ひとつクリアすると、またひとつ壁が出てきて、思考の前進を阻むのです。

四季の家工房の道具と設備で95%くらいできそうなのですが、最後の5%がひっかかってどうしても完成のイメージに到達できないのです。自分たちの手で加工することはひとまず置いといて、別の方法を考えないといけないようです。通常、このような加工で大量生産するときは「NCルーター」という専用の加工機を使うのですが、直接の知り合いで工場にNCルーターを持っている人はいないのです。

そこで、まずは知ってそうな人にあたりをつけて木工屋さんや材料屋さん、建具屋さんなどに聞いて回り、NCルーターを持っているところを紹介してもらった上で、小ロットでも引きけてくれそうなところと直接交渉しました。加工内容の打ち合わせに材料手配や作業分担の打ち合わせ、価格の見積もりももらって、ようやく完成のイメージに到達できました。

納期だけは先方任せとなりましたが、通常の業務の流れの中に「小ロットの加工」を挟んでもらうのでこれはいたし方ありません。10日ほど待ちましたが、NCルーターでくり抜き加工をした切削面は一糸乱れぬ美しい仕上がりで、「やっぱり、餅は餅屋だねぇ」と大いに納得させられたのでした。あとは最終的な組立と仕上げを施して、晴れて納品となりました。

これをご依頼いただいたのは、数年前にお住いの新築をさせていただいたお客様です。かねてから「木で作るモノだったら大抵のものは挑戦しますよ」と言っていたので、これまでにも製品を置く架台や作業台などいくつかご依頼をいただいていたのですが、今回のパレットはなかなかに頭を悩ませました。でもおかげさまで、技術的なネットワークも広がったし、良い勉強の機会をいただきました。次回からは、何十個でも何百個でも自信を持って対応できます。

以前、あるお客様から「小野さんはモノづくりの検索エンジンだね」と言われたことがあります。大工や家具づくりならば直接自分でお答えできるのですが、お客様からの質問やご要望は幅が広く全ての分野に精通しているわけではないので、「これについてはこの人に聞けばよい」というブレインが多ければ多いほど、迅速で柔軟に回答することができるのです。

そういう仲間に恵まれたことは僕の宝ですし、お客様にこのように評価していただいたことは、本当に嬉しいことでした。
小野
2016.12.15
四季の家工房は吹けば飛ぶような本当に小さな建築屋でして、立派な社屋があるわけでもなく、ショールームやモデルハウスもなく、折り込み広告やフリーペーパーへの掲載もしていません。なので、お客様と知り合うきっかけってのはこのホームページと口コミくらいしかないのですが、このところ年々増えているのが、過去に新築やリフォームでご縁を持ったお客様からのリピートです。

今年は四季の家工房が開業してからちょうど10年、そして四季の家工房を開業する以前は、僕も宇佐美も数年間個人で建築をやっていたので、長いお客様ですともう15年以上のお付き合いになるわけです。そうしたお客様から忘れられていないってことは、とっても嬉しいことです。

ご依頼いただく内容もいろいろです。新婚だったご夫婦に家族が増えて子供部屋を間仕切りしたいとか、逆にまだ小さかった子があっという間に大学生になって一人暮らしを始めたんで、子供部屋の間仕切りをはずして広く使いたいとか…15年も経てば家族構成も変わってきます。

新築時には「変化に対応できるような間取りにしましょう」とご提案させていただいているですが、「今になってその意味がわかった!」なんて言ってもらえると、けっこう嬉しくなったりしちゃいます。また、エアコンや給湯器など日々使う設備器具の更新も避けて通れないことです。こうした器具や家電などは、10年くらいを境にどうしても故障や不調がでてきてしまうので、メーカーのサービスを呼んで修理してもらったり、場合によっては器具そのものを交換することも必要になったりします。

それと、床や壁などのキズの補修や塗料の塗り替えなど、お子さんが小さなうちは「直してもどうせまた汚すだろう」ということで見ないふりしていたのだけど、そろそろ気になりだしたから直そうかなぁ…と言う方もみえます。

懐かしい人からのお電話は本当に嬉しいものです。本来でしたら、こちらからもっとマメにお伺いを立てなければいけないのですが、いつも「ご無沙汰」してしまって申し訳ありません。いろいろなご要望にお応えできるように、日々モノづくりアンテナは張り巡らせてますので、住まいのことや木のことなど「?」と思ったらどうぞお気軽にご連絡ください。
小野
2016.12.01
補助金のご案内です。11月より「住宅ストック循環支援事業」と言う国の補助事業がスタートしており、先日その説明会に参加してきました。正確には補正予算が成立した10月11日からとのことですが、細かいことはさておき概要だけお伝えしておきます。詳しいことは国土交通省のホームページでご確認ください。住宅ストック支援事業の事務局のホームページにも情報が載っています。

大枠のイメージとしては以前の「住宅エコポイント」の後継事業のような感じですが、今回のはポイントではなく補助金をもらえる事業になっています。また「住宅のエコリフォーム」だけではなく、「良質な既存住宅の購入」「エコ住宅への建て替え」など対象が大幅に広がっています。

印象としては以前の「住宅エコポイント」が「性能の良い部材を使用したらポイント出しますよ」といった部分を補助する制度だったのに対し、今回の「住宅ストック循環支援事業」は「このような建物に改修しましょう」といった一歩踏み込んだ感じがあります。しかし、事業としての規模を見ると以前の「住宅エコポイント」が1000億円、2000億円という桁だったのに対し、今回の「住宅ストック支援事業」は250億円の予算とのことでやや小ぶりな制度となっています。

…ということは、「予算がなくなり次第おしまい」という早い者勝ち的な事業になると思われます。このような補助金を獲得しながらかしこく家づくりに活用するためには、スピードも大切になってきますね。交付申請期限としては6月30日となっていますが、「それまでもたないだろう」と言うのがおおかたの見方のようです。

では、「どのような内容の工事に対して、どのくらいの補助金がもらえるか」ということを簡単に見ていきたいと思います。まずは「住宅のエコリフォーム」ですが、これは従来の「住宅エコポイント」に近い内容になっていて、持ち家または既存住宅を購入(10月11日以降)した上で、省エネ性を高めて自身が居住するものを対象に最大30万円、同時に耐震改修を行う場合はさらに15万円の上乗せがあります。

省エネ性を高めるための工事っていうのは、「内窓設置やガラス交換などの開口部断熱」「外壁や屋根などの断熱改修」「節水型トイレや高効率給湯器設置などの設備改修」という3項目に大きく分けられています。その中がさらに細かく分かれていて、例えば内窓を設置するのであれば窓面積が2.8㎡以上ある掃き出しサイズの大きな窓であれば2万円とか、0.2㎡以上1.6㎡未満の小窓だったら8千円とか、もらえる補助額が決まっています。

そして、「補助額の合計が5万円以上」という条件も付されていまして、窓を例にすると大型の窓であっても最低限3ヶ所の設置が必要になるわけです。これは、「窓1個替えただけではエコ住宅にはならないですよね」という理屈の現れなのでしょうね。僕たちが考える省エネ改修も、一部分の性能をぐんと上げるよりも、少しづつでもよいので全体の性能を上げたほうが良いのではないかと思っています。窓関係については四季の家工房ではLIXILを使うことが多いので、LIXILのホームページも参考にしてみてください。こちらは写真やイラストで非常に分かりやすくなっています。

次に「良質な既存住宅の購入」ですが、自ら居住するために既存住宅を購入する若者が対象になっており、10月11日時点で40歳未満と言う年齢制限があります。そしてインスペクションを受けた上で、上記内容のエコリフォームを行った場合50万円…こちらにも耐震改修の15万円の上乗せがあります。若い人の持ち家支援ってところと、インスペクションがポイントです。インスペクション費用の5万円もこの中に含まれているとのことですが、築年数が浅くてそもそもエコリフォームを必要としない中古住宅を購入する場合は、インスペクション費用の5万円しかもらえないってことですね。

最後に「エコ住宅への建て替え」です。これは今回初めての新しい制度です。これまでは「耐震性のない建物は耐震改修をして、耐震改修工事の費用に対して補助をする」という制度でしたが、今回の制度では「耐震性のない建物は除却して、新たに建て替える場合に補助しましょう」という、これまでにない内容になっています。

これまでも耐震改修のお見積もりをすると、「えっ!こんなにかかるの。だったら建て替えるか…」というお客様もみえたのですが、このようなケースの時に使える制度だと思います。ただし、建て替えにも条件があって、まずは「旧建物が耐震性がないこと(昭和56年5月31日以前の建築確認か、または昭和58年3月31日以前の登記事項証明書)」「新しく建てられる建物に所定の性能があること」などが条件になります。

この所定の性能を表すものに「BELS☆☆☆☆☆」というものがあります。☆の数によって住宅のエコ性能を見えるようにした制度で、クルマのエコカー表示とか燃費表示などにも例えられます。補助金の金額は☆の数によって30万円〜50万円となっており、こちらに年齢制限はありません。今年から始まった制度なのでまだ周知も徹底していないのでしょうが、四季の家工房としてはまだこの「BELS」という制度を利用した実績はないのです。

しかし、今回のように補助金制度の要項として取り入れられていくと、そんなのんびりしたことも言ってられず、さっそく勉強しなくてはいけません!!幸い梅村が他の事務所のお手伝いで申請の準備をしたことがあるらしく、週明けに内輪の勉強会で仕様づくりをします。ただ、現在の四季の家工房の仕様でほぼほぼクリアできることはわかっているので、後はエアコンや照明器具などこれまではお客様主体で選定していたものを、もう少しスペック重視で選んでいくことになると思います。

以上が今回の補助事業のおおまかな概要です。たぶん、これから年末年始にかけてこの「住宅ストック支援事業」という言葉を耳にすることがあるかと思います。内容でも触れたように事業規模は小さく、早い者勝ちの取りあい合戦になると言われています。…ここでちょっと裏話的なことですが、「取りあい合戦」って言うのは、「消費者であるお客様が補助金を取りあう」ということではありません。取りあうのは、工務店や建設会社が「お客様を取りあう」のです。

本来であればゆっくりと…ゆっくりと言っては語弊がありますが、必要な時間をかけて自分たちの暮らしを見つめなおして、これからの住まい方を考えるのがリフォームであれ新築であれ大切な工程なのですが、補助金ありきで「即決」「妥協」してしまっては本末転倒です。「お客様!今、契約すれば補助金間に合います!」みたいなセールストークであおられて、取りあいの対象にされることのないように!!住まいに関して衝動買いはあり得ません。バタバタ決めてしまうのは考え物です。

…とは言え、僕たちとしても使える制度は使えるように準備しておかなくては、それはそれでお客様に対して失礼なことだと思います。なので、まずは僕たちもお勉強しますが、この時期に本気でリフォームや建て替えをお考えの方は、すぐにでも行動を起こすことをお勧めします。行動すれば情報が入ってきて考える材料も増えますので、例えばモデルハウスに行ってもいいですし、本を読んだりネットサーフィンをしてもいいと思います。
小野
2016.11.18
建物とあまり関係ないってことで封印していた映画ネタですが、とっても良い作品に出合えたんで久々に映画の話をしたくなって書き出したら大いに脱線してしまい、収拾がつかなくなり…ようやく本題です。本題はこの週末に公開された「この世界の片隅に」という長編アニメ映画です。自分が好きな映画ということもあるのですがそれだけではなく、たくさんの人に観てもらいたいと思いご紹介させていただきます。親子や夫婦や友達、誰かを誘って…ぜひ!(以下、ネタバレはないので安心して読んでください。)

まずは原作についてですが、こうの史代(ふみよ)さんと言う女性漫画家の同タイトルの漫画が原作です。こうの史代さんを知ったのは、映画「夕凪の街 桜の国」がきっかけです。こちらも同タイトルの漫画が原作なのですが、こちらはまず映画を観て興味が湧いて、原作の漫画本を購入しました。映画はアニメではなく実写なのですが、もちろん映画そのものもとても良いです。なにせダブル主演がたまらない!こちらも詳しくご紹介したいところですがまた脱線してしまうんで、興味がある方はDVDを借りてみてください。

で、映画もとても良いのですが、原作漫画がこれまた良いのです。ふんわりとした柔らかなタッチで、一見すると精緻なイメージではないのですが細かい部分まで丁寧に描写されていて、街の雰囲気や温度まで伝わってきそうな感じです。スクリーントーンやベタ塗りと言った画法を使わず、一本一本線を重ねて絵を描いているのは、本当に作者が絵を描くことが大好きなのでしょう。

こうの史代さんの絵にやられてしまった僕が次に手にしたのが、今回紹介する映画の原作漫画の「この世界の片隅に」です。戦前戦後をまたいだ時代背景の中、広島の呉という街にお嫁に行った主人公の「すず」の目を通して、世の中の移り変わりを普通の人たちの普通の暮らしの中に描いた、ジワリと心に沁みる漫画作品です。

「すず」は今で言う天然の女の子で、自分でも「わたしは、ぼぉ〜としてるけん」が口癖でほのぼのとした明るさで周囲に好かれているのですが、自分自身でも気が付かないうちに実はものすごくたくさんのことを我慢して、自分を押し殺しているのでしょう。大好きな絵を描くということは、「すず」にとって心のバランスをとる大切な行為だったはずです。漫画の中に「すず」が創作した短編漫画がでてくるあたり、作者本人を重ねているのかもしれませんね。

で、長編アニメ映画「この世界の片隅に」ですが…まず画面から受ける印象は、原作のふわふわした絵のイメージを損なうことなく、色彩の美しさと風景描写の緻密さで、より観る者が本当に「すず」の目線で見ているような不思議な臨場感と安定感を味わえました。原作でも感じましたが、生活の端々というか場面ごとのほんの細かい表現がとても丁寧で、観ていても何の違和感もなく映画の世界に引き込まれていくのです。

建築屋のいやらしい職業病かもしれませんが…僕はいつも映画を観ていると、木造の建物の細かい納まりや空襲で壊された建物の壊れ方などに、無意識に目が行ってしまいます。別に粗探しが楽しいわけでも知識をひけらかせたいわけでもないのですが、観ていて「あれ?これ変だなぁ」と思ってしまうと、せっかく集中していたストーリーから現実に引き戻されてしまうのです。

また見方を変えてみると、建築屋が建築を見て何の違和感もなく受け入れられるってことは、そういう繊細な気遣いがきっと他の分野の表現にも及んでいると想像することができます。例えば料理のプロなら料理に、クルマのプロならクルマに目が行くのは当たり前のことかと思います。しかも、何から何までスーパーリアルに再現することが大切なのではなく、ありもしないことを本当にあることのように描くことも必要で、制作側の人は観ている人が気が付きもしないような些細な表現に心血を注いでいるのだと思います。だから、それらをまとめる映画監督ってのは大変な職業だと思います。映画が総合芸術と言われるのもこのあたりでしょう。

さてストーリーの方ですが…こちらも原作にかなり忠実ですが、漫画とはいえ全3巻分を2時間そこそこにまとめるので、すべてのエピソードを盛り込むわけにもいかず、映画には反映されていない部分もあります。ちょっと残念だったのは、原作ではけっこう重要な脇役だった遊女「りん」の出番が少なかったこと、それによって「すず」と「りん」との触れ合いが大幅に削除されたこと、すずの亭主の「周作」と「りん」とのエピソードには全く触れなかったことなどに若干の物足りなさを感じました。これらの削除されたエピソードは、削除されなかった「すず」と幼馴染の「哲」とのエピソードと合わせて倍以上のふくらみとなるはずの部分なのですが…。

それぞれが別々の三角関係なのですが、戦時中にあっても人は三角関係に悩んだり、嫉妬したり、怒ったり、許したり…そこがものすごく生々しくリアルで、しかも「周作」のとった行動は現在を生きる僕たちにはちょっと想像できないような行動で、でもそれが生きるか死ぬかという戦時中の緊迫した状況を映していてなんとも切ない感じなのですが、その部分が中途半端になくなってしまいました。

…今これを書きながら、「あのエピソードは敢えてなくしたのかなぁ」とも思えてきました。「この映画を多くの人に観てもらいたい」と文頭に書きましたが、それは僕の思いだけではなく映画の作り手はもっともっと強くそう思ったに違いありません。なぜなら、戦争の痛みをこんなにも感じさせて、美しい自然と共にしたたかに生きる日本人の普通の暮らしが、こんなにも美しく感じられる数少ない映画のひとつだからです。この映画を大人だけでなく子供たちにもぜひ観てもらいたい…そんな気持ちから、敢えて三角関係という理解しにくいエピソードを外したのかもしれません。

最後に…「すず」役として声優初挑戦の、のん(能年玲奈)がと〜っても良かったです。今となっては、のん以外には「すず」の声は考えらえません!芸能ゴシップのワイドショーネタにはほとんど興味のない僕でも、独立とか事務所とのゴタゴタとかで名前を変えたってことくらいは知ってはいましたが、映画からの帰り道中のクルマの中でカミさんが親切にレクチャーしてくれました。これをきっかけに役が広がればよいですね。楽しみにしています。

映画「この世界の片隅に」の公式サイトはこちらです。

「この世界の片隅に 公式サイト」

ちなみに岐阜ではモレラでしかやってないみたいです。もっと、いろんな劇場でやってくれれば良いのにね。
小野
2016.11.14
今年のアニメ映画と言うと…「君の名は」ですね!そりゃあそうです、もはや説明の必要もなし…です。興行的な特徴と言えば、公開当初の爆発的な動員を稼ぎつつ、その後も右肩上がりで評判が評判を呼び、結果この国民的盛り上りです。普段アニメに興味を示さない世代を巻き込んだのがカギで、僕も高校生の息子に薦められて観に行って感動してしまったクチです。

なんの予備知識もなしで…正直なところ、何も期待しないで観に行きました。どうせ入れ替わり系の単純な青春ラブストーリーだろうと思いつつ、息子との会話の糸口にでもなればいいか…程度の思いで。そしたら、あれあれ、こちらが大いに感動してしまいました。日本の精神性や文化が細やかな演出で美しく描かれていて、自分たちの中に流れる根源的なものを多くの人が感じることができた映画ではないでしょうか。今後海外での公開予定もあり、どこまで広がって行くかが楽しみです。

映像を通して異国の文化を知ることができるってことは、僕にとって映画を見る大きな楽しみのひとつです。もちろん映画を作る監督の目と言うフィルターを通しての表現なので、そこから得られる情報が一般的だったり標準的だったりするとは限らないし、当然ながら誇張した表現も含まれているとは思います。でも、作り手が情熱をもって伝えたかったことであるのは間違いなく、ある国や地域を舞台とした複数の映画を観ていくと、なんとなくその国の表情が見えてきたりします。

昨年ポーランドを旅した時も、旅の前後にいくつかのポーランド映画を観ましたし、今年の中国出張の折にも中国映画を観ました。政治家だったり一般の人、芸術家、軍人の妻、労働者…それぞれの映画がフォーカスする人物や事象、時代背景はいろいろで、そういう人たちの目線でその国を疑似体験することはガイドブック以上に旅を膨らませてくれるし、決してロケ地巡りなどをするわけではないのですが、物事の見え方が少し変わってくると思います。

また反対に、旅で得られた親近感や土地勘は、その後の人生で観る映画をより濃厚なものにしてくれるので、僕にとって映画を観ることと、旅をすることはとても関係が深いことなのです。そして、まだまだ世界には知らない土地がいっぱいあって、すべてを旅するわけにもいかないので、これからも映画を通しての旅は続くでしょう。ありがたいことに、DVDや配信などを利用すると、岐阜のような田舎に住んでいても観たい映画がすぐ手に入るし、お手軽に世界旅行が楽しめます。

逆の立場もあるかもしれませんね。岐阜の街中やどこかの食堂かなんかで、バックパックを背負った外国の旅人に出合ったとして、その旅人が日本の映画を観たことが日本に来るきっかけだったとか、「君の名は」を観たとか、アレ観たとかコレ観たとか、キタノだのコレエダだのって話になったらさぞ楽しいことでしょう。話が盛り上がったら「今日はオレんち泊まれよ」みたいなことになっちゃうかも?

で、実はこれ前振でして、今回の日記の本題はこの週末に公開された「この世界の片隅に」と言うアニメ作品を紹介したかったのです。今年注目のアニメってことでとりあえず「君の名は」で書き出したら、とんでもない脱線になってしまいました。建物とは関係ないので日記のネタとして映画の話は封印していたのですが、やっぱり好きなものは好きなので、書き出してみたら文字が勝手につながってこんなことになりましたが、長くなるので今回はここまでとして次回の日記で「この世界の片隅に」をご紹介します。(つづく)
小野
2016.09.29
キッズスタジオ今年もやります!職業体験イベント「キッズスタジオ」!

事前申し込み等は必要ありません!当日、会場でお待ちしていますので、楽しい1日を過ごしましょう!!

ご不明な点や聞きたいことなどありましたら、四季の家工房までお気軽にお問い合わせください
小野
2016.09.19
本日お隣の大国での工事が完了して、久々に開放感あふれる夜を過ごしています。今回は四季の家工房だけでなく3チーム(総勢12名)の大工で臨んだ11日間の工事でしたが、何せ現場の事情も違えば言葉も分からん…しかも帰りの便はFIX(固定)されていて、何が何でも帰る日までには工事を間に合わせなくてはいけないというプレッシャーの中で、みんなよく働きましたよ。

どうにか形になったので日記を書く心のゆとりもできたってことですが、終わってみれば「余裕で完成!」とも「なんとか間に合った!」とも「予定通り!」とも、如何様にもとれるような…それが正直な感想です。

さて、なんで異国の地まで日本の大工が呼ばれるのか?ってことですが、もちろん日本の企業の進出というのが一番の理由にはなります。ただ、「全てを日本人の手で作り上げる」というわけではありません。商業施設を作り上げる中で、どうしても「和」のテイストがはずせない部分…お店のイメージを左右する最も目立つ部分として、日本の木造軸組みの意匠が取り入れられているのです。来店したお客さんが最初に目にする所であり、そして「このお店はこういう所」という印象をずっと持ち続けてもらうための仕掛けです。

写真をお見せできなくて申し訳ありませんが、具体的にどういうものを作ったのかと言いますと…3階まで抜かれている大きな吹き抜けのロビー空間から施設の核となる部分に導くための入り口となる部分に、木造軸組みの屋根をかけたと思ってください。建物の内部にある飾りとしての屋根ですが、間口が33メートルもある巨大な木造の屋根をくぐって、お客さんは「和」のリラクゼーションの世界に入っていくわけです。

多くの人が触れるであろう桧(ヒノキ)の柱はカンナ仕上げされており、見た目だけの「和」ではなく肌を通して日本を感じてもらえるのではないかと思っています。例えとしてはちょっと壮大すぎるかもしれませんが、ディズニーランドのゲートがただのゲートではなく、「夢の国」への入り口であるような、そんなイメージです。

これが水平方向の「和」の仕掛けだとすると、もうひとつ垂直方向にも「和」の仕掛けを作りました。吹き抜けの一部分…1階から3階の天井まで巨大な壁を立ち上げました。幅約6メートル×高さ約14メートル×厚さ約40センチの一枚の壁が、吹き抜けに面してバーンと立ち上がった感じをイメージしてください。そして、その壁を153個の升目を描くようにくりぬいて、くりぬいた中には照明を組み込んでアクリル板で塞ぎました。

前者の屋根組みが伝統的な「和」のイメージだとすると、こちらの壁は伝統的なしつらえではありません。でも、日本のデザイナーさんが「和」を表現する手段としてデザインしたものです。そのイメージを具現化するためには、モノの在り様というか、コンセプト自体を理解していないと、似て非なるものが出来上がってしまいます。「在り様(ありよう)」を理解して「遣り様(やりよう)」を考える…これも僕たちの大切な仕事なのです。単に合板で箱を作って積み上げるだけ…とはいかないものなんです。

まぁ、簡単に説明しましたが、これがなかなか手ごわい仕事で、要は小さな木板を組み合わせて巨大な本棚状のオブジェを作るのですが、縦横のラインをきっちり合わせつつしっかりと組んでいく必要があります。しかも、足場は普段日本で使い慣れた足場ではなく竹を束ねた板…この竹の板もしっかり固定されているわけではなく、ずれたりしなったり…で、時々折れる(笑) あ、笑ってられませんが、このような足場に体重を預けて作業するわけです。(泣)

153個の箱を組むのに、6人がかりでほぼほぼ1週間…打ったビスは7000本。途中からは現地の電気屋さんも加わって、組み付けた箱に穴をあけたり電線を通したりする作業も平行しつつ、言葉も通じない割には和気藹々とした現場でした。

で、明日は丸一日オフです。街に繰り出します!
小野
2016.09.02
長らくおサボり失礼しました。この夏の間、H市への長期出張が続いて、出張しながらの名古屋の住宅の竣工・引き渡し、出張から戻ったらリフォームの着工、そして工事を進めながら今度はお隣の大国にまた出張、戻ったと思ったらまたまた来週から出張…「忙しい!!」と言うわけではないのですが、何となく落ち着いて「書く」モードになれませんでした。四季の家工房は出張工事が多いわけではないのですが、なぜかこの夏は重なってしまったんです。

自分たちのベースとなる四季の家工房の作業場を離れての工事は、普段と違う準備が必要だったり、資材の手配先を探したり道具の段取りなどいろいろ大変なこともあるのですが、知らない土地にしばし身を預けての仕事は、旅好きの僕としてはけっこう楽しい数週間でもありました。

楽しさのエッセンスとしてはいろいろあるんですが、まずわかりやすいところで「食」の楽しみでしょう。海の近い街だったので「海の幸」が旨い!!工期としては2〜3週間ということで乗り込んだ現場だったのですが、最終的に5週間に及んでしまい、その間、人員調整でメンバーが来たり戻ったりでちょこちょこ大工の入れ替わりがありました。その都度、「歓迎会」とか「送別会」と理由をつけてはあっちの居酒屋こっちの居酒屋へと通ったのですが、どこに行ってもおいしい魚にめぐり逢えてハズレは一軒もありませんでした。

魚以外にも名物の「餃子」は街中いたるところにお店があって、これまたどこで食べても旨いのです。ハンバーグの有名なお店もあって、肉汁たっぷりの炭火焼きげんこつハンバーグのチェーン店もあって機会があったらまた行きたい味ですね。「ケンミンショー」で紹介されたらしくて、岐阜や愛知、東京あたりからもわざわざ食べに来る人がいるそうです。

ご想像の通り、太りましたよ〜。特に最初の2週間ほどは、なんだかペースもつかめず手あたり次第食べてたもんで、目に見えて太りました。3週目くらいからはだいぶ外食のペースにも慣れて、ようやく「ちょうど良い」を知りました…遅すぎ。そして、これだけ食べることを書いておきながら、おいしそうな写真の一つもないってのが問題ですが、あいにくそのようなマメさもなく…写真を撮ればよかった〜と気が付いた時には、たいがい皿だけになっているのです!

楽しさの一番のポイントはなんと言っても「仕事」そのものでしょう!こう書くと猛烈な仕事人間みたいで憚られますが、僕は普段は現場でモノを作っている時間よりも、手配だったり雑用だったり打ち合わせだったりに時間を使うことの方が断然多いのです。ですから、これだけ集中して自分の手を使ってモノ作りに打ち込んだのは、本当に久しぶりだったんです。

朝現場に行って一日仕事をしてビジネスホテルに戻る…一見単調な毎日なのですが、モノづくりの仕事のおもしろさは「一日働いた分が形となって見える」ってことでしょう。特に後半はだいぶ仕上げに近くなってきていて、日々の変化にわくわくしながら仕事をしておりました。やっぱり自分の中には職人としての血が流れているのだなぁと実感させてもらいましたね。

もう一つ、おまけの楽しみもありまして、知らない土地で余った時間をどう過ごすかと言うのも人それぞれいろいろあると思いますが、僕の場合、大好きな音楽を通してしばしの行きつけのお店が見つかったことも大きいです。地元の音楽好きが集まるお店で、週に一回オープンマイクと言う飛び入り参加のライブを開催しているんです。

ふらっと行ってワンドリンクオーダーするだけで、地元ミュージシャン達の演奏が聴けるんです。ジャンルも年齢もばらばらですが、皆楽しそうに歌い奏で聴いています。僕もお店のギターをお借りしてちょこっとやってきましたよ。

聴いているだけでなく、一回ステージに立つとまわりの人との距離がぐんと縮まるんです。最初にお店に入った時は「なんか、知らない人が来てるな〜」程度になんとなくアウエェー感いっぱいだったんですが、一曲やると「あ、この人、同類だ!」って感じで会話も弾み、音楽を通していろいろな人と知り合うことができるんです。

工期の都合で「今週で最後です」ってことを3週連続で言うことになり、その都度「お別れライブ」をやってもらい、すっかり嘘つきオジサンになってしまった…と言うオチがついてしまいました。
小野
2016.05.27
4月26日の日記でミニマルな暮らし方を提案する「YADOKARI」さんの講演会について書きましたが、めぐりあわせって不思議なもので、今イメージ的にちょっと近い雰囲気の建物を作らせていただいています。

四季の家工房が直接お請けした建物ではなく木工事だけ頼まれてのお手伝いなので、あまり具体的にお話しすることはできないし写真の掲載も控えさせていただきますが、おもしろい仕事なので少しだけご紹介させていただきます。

その建物って言うのは…「コンテナハウス」なんです。払い下げられた貨物用のコンテナを改造して、住宅やお店にしてしまおうって言うのが密かな人気を集めていて、ネットなんかで見ると結構いろいろなところに建っているみたいです。岐阜でもたま〜に見かけるようになりました。

外観はほぼコンテナそのまんま…そのまんまってのがポイントで、外壁で覆ったり上に屋根を架けてしまうと、コンテナとしてのおもしろさが薄れていってしまいます。ただ、コンテナの箱だけではやはり使い勝手が悪いので、大きな開口をあけて床から天井までいっぱいの大型の窓を付けて、その窓の前面を深い庇で覆うようにしてあります。この庇は直射日光をコントロールすると共に、狭くなりがちの室内に外部を取り込む中間ゾーンのような役目を担っているのでしょう。

シンプルな形状で「板がくっついている」程度の軽いイメージの庇にするため、現場でギリギリの納まりを考えながらなんとか作りました。シンプルなものって一見簡単に出来ていそうなのですが、こういうモノの方が作るのは難易度ががぜん高いです。

コンテナそのものの高さも絶妙です。新たに内装として新設する床から天井までの高さが、ギリギリ2m20cmで納まります。…ということは、住宅用アルミサッシの高さ2200mmの規格の物を取り付けると、ちょうど床から天井ぴったりに納めることができます。ですから、通常よく見る「窓の上の垂れ壁」が必要ないので、とても空間がシンプルになりますね。空間を構成する線を一本づつ減らしていって、どこまで少ない線で空間が作れるか…っていうのがシンプルな建物づくりの醍醐味です。

と、いろいろ書きましたが、これは僕たちが直接お引き受けした案件ではなく、あくまでもお手伝いとして参加させていただいている工事なのです。ですから、設計上の意図やデザインの急所などは、このコンテナハウスを設計した設計士さんの頭の中にあることなのですが、そのイメージを図面や現場から読み解いて、自分たちなりに咀嚼したうえで作りにかかるんです。

普段から「どうせ作るならできるだけカッコ良いモノを作りたい!」って思いで仕事をしてますんで、こうした物の考え方も癖のようになっているのですが、そこがこの仕事の大変さでもあり、おもしろさでもあると思います。言われたことしかやらない大工になっちゃいけないですね。
小野
2016.05.23
気密の話の続きです。気密を確保するためにはどうしたら良いか…簡単に言えば、気密シートですっぽりとくるんでしまえばよいのですが、なにせ家一軒ですからそんなに言うほど簡単なことではありません。

気密シート張り込みまずは基礎ができたら、上棟に先立って基礎内に気密シートを張りこみます。気密シートは1m幅のロールなので、継ぎ目はテープで押さえていくのですが、重なり面が立ち上がりなどの垂直部分ではなく、土間などの水平部分で継げるように計画立てて進めていきます。

なぜかと言うと、気密テープはただ貼るだけではなくて、ローラーでよく押さえないとしっかりした気密が取れないのです。基礎の中途半端な高さでローラーをかけるより、水平面で上から押さえた方がより密着しますし、作業も楽な体勢で出来ます。

手順としては、まず立ち上がり部分にシートをかけて、土台の組み立てを行います。土台をアンカーボルトで締めこむことによって、シートが固定されてピンッと張ることができますし、その後の作業もやりやすくなります。なにせ相手はコンクリートなんで、上部の木造躯体みたいにタッカーで留めつけるってわけにいかないもんで、こういう「経験からくる工夫」が必要なんです。

シーリング材の充填この時、アンカーボルトを差し込むためシートに穴をあけた部分には、シーリング材を充填してから土台を設置していきます。現場に入る全員で「少しの隙間も許さない」と言った徹底した意識を共有していないと、なかなかこうした細かな気配りはできないんです。
気密処理立ち上がりが固定できたら、次は土間全面にシートを敷きならして、継ぎ目を気密テープで塞いだら基礎の気密は完成です。
気密処理写真は配管が通るスリーブ(基礎にあらかじめあけた穴)周辺の気密です。こんなところも、気密シートの端部が切りっぱなしになると空気漏れの原因になるので、気密テープで完全に塞ぎます。
ブルーシートで養生ブルーシートで養生この後で断熱材を敷きこんで、保護のために6cm厚のコンクリートを打設します。

ここまでできたら後は上棟後の作業になるのですが、問題は上棟までの天候です。もし雨に降られたら、中は池になるし断熱材が「ぷか〜っ」と浮かんで来たりしたら目も当てられません。そんなわけで基礎にブルーシートで屋根を作って、上棟まで養生します。
屋根の気密処理で、無事上棟も終わったら、次は屋根の気密です。この建物の屋根は二重構造になっていて、これは一回目の屋根面に気密シートを張っているところです。

屋根は基礎と違って平面ですし、コンクリートの基礎と違ってタッカーを使って留めつけていけるので施工上難しいことはありませんが、ここももちろんローラーを使って丁寧に貼り合わせていきます。タッカーは原則として気密テープを張る位置に打って、タッカーの微細な穴さえも許しません。
外壁面の気密処理最後に外壁面の気密です。基礎の時に土台で挟み込んで固定した気密シートの端部は、基礎の外側でぴらぴらっとさせてあり、屋根の端部は屋根端部でぴらぴらっとしています。

これらを外壁側に折り込んで、外壁の気密シートと重ね合わせて上でタッカーで留めつけて、さらに気密テープで継ぎ目を塞いでいきます。この作業が東西南北全面で出来たら「気密施工はとりあえず完了」ということになるのですが、まだまだこの後、細かいところに手を入れていかなくてはなりません。
細かい部分の気密処理細かいところ「その1」は、梁などが外壁を貫通して外部に持ち出す部分の処理です。

…その前に、計画時点で貫通する部位を少なくすることも必須で、図面の時点で「どこで気密をとる」「どこが弱点」なんて検討を繰り返して、木組みそのものを変更することもあります。それでも構造上貫通させざるを得ない部分に関しては、専用の気密部材や気密テープを使って念入りに塞ぎます。
細かい部分の気密処理細かいところ「その2」は、前回の日記でもふれた配線・配管等の外壁貫通部分です。この写真は熱交換換気扇の吸気部分と、右下のオレンジ色のパイプは外部コンセントの配線です。

150ミリφの塩ビ管と丸パイプ専用の気密部材、気密テープを使い、コンセントの3cmほどのパイプにはシーリング材を使って気密をとっていきます。
細かい部分の気密処理細かいところ「その3」は、窓まわりの開口部分です。この部分はおおむね平面で処理できるので難易度は低いのですが、窓の数だけ弱点があるのでここも念入りに気密テープを貼って塞いでいきます。

さらにこの上に5cm角の木材をぐるりと打ち付けるので、躯体と気密シートのレベルでの気密はばっちりです。あとはサッシ取り付けの工程でサッシと気密シートを一体にすれば、窓まわりの気密もほぼ完璧になります。
細かい部分の気密処理細かいところ「その4」です。気密シートの継ぎ目以外のところに短く切った気密テープがちょこちょこありますが、これは仮止めしたタッカーのピンホールや引っ掛けキズなどの補修です。「後でまとめて補修しよ〜」と思うところですが、穴をあけてしまったらすぐに補修をかけないと、後からでは見逃してしまいます。
こういった一連の気密処理作業を、全部うちの大工でやっています。ここまで徹底的にやろうと思うと、下請けさんに外注するより息の合った身内の手でやる方が確実に良い仕事ができると思います。気密施工が完了するころには、気密テープの粘着面で指の腹はまっ赤になってヒリヒリもんですが、こうして良い数字になって結果が出せると、苦労も報われる感じです。
小野
2016.05.19
現在工事中の住宅で気密測定を受けました。結果は…C値(相当隙間面積)=0.3c㎡/㎡!なんとびっくりの新記録です!

気密測定の機械気密測定って、こんな機械を使います。これまでの経験で1.0c㎡/㎡を切るのは自信があったんです。この1.0c㎡/㎡ってのは気密住宅を名乗るためには確実にクリアしておきたい数値なのですが、以前の測定では0.5c㎡/㎡とか0.6c㎡/㎡とかの数値を出していましたので、ここはまぁいけるだとう…と。

よそ様のことを引き合いに出すのもどうかとは思いますが、数字だけ見てもなんのこっちゃ…とわからないだろうと思いますので、ちょこっと調べてみました。「高気密」とか「C値」とかで検索するとたくさん出てくるのですが、高気密を売りにするハウスメーカーさんが謳っている数値はが0.6〜0.7c㎡/㎡前後みたいです。そこからイメージしていただくと、この0.3c㎡/㎡と言う数字がかなり良い値だということをご理解いただけますでしょうか?

では、この相当隙間面積のC値と言うのが一体なんなのかと言うと、床面積1㎡当たりどれだけの隙間があるかということになります。つまり、0.3c㎡/㎡が意味するのは1㎡の床に3mm×1cmの隙間しかないってことになります。これを建物全体に換算すると名刺一枚の面積よりも小さな隙間になりますが、この名刺一枚分の隙間は一体どこにあるのかと言いますと…まず考えられる最も大きな隙間は外壁を貫通する電線の周囲からの漏れです。

外部コンセントの配線例えばこの写真は外壁に取り付く外部コンセントの配線ですが、オレンジ色の管に電線とアース線を通してあります。気密測定時にはテープで塞いで計測するのですが、テープなのでしっかりと貼ったつもりでも微妙に隙間が残ってしまいます。

最終的にコンセントを取り付ける時は外壁に合わせてこの管をカットして、この管の中にシーリング材を充填するのでほぼ隙間はゼロになるのですが、現時点では長めにしてあるので中途半端なところにシーリング材を充填してしまうと電線の融通がきかなくなってしまいます。

そんなわけで測定時にはテープを使うのです。こうした貫通部分が外部コンセントの他にも、エアコン、電灯、インターホンなど全体で十数か所あり、トータルすると結構な気密漏れが想定されます。

それと、玄関扉の下端です。玄関は最終的にはタイルで仕上げるのですが、今の時点ではまだモルタルで均してタイルを貼る嵩上げ分として3cmほど低くなっていて、その隙間もテープを使って塞ぎます。扉側はテープの密着性も良いのですが、荒打ちのコンクリート面はデコボコも多く、ここからも結構な空気が入ってきてしまいます。

もう一つはサッシのレールの隙間です。建具がスライドする引き違い窓などは、どうしても構造上多少の隙間があるのでここも仕方ありません。竣工時は建て付け調整するので、多少改善されるとは思いますが、今回結果が良かったのは引き違い窓が比較的少ない建物だったということも関係してるかもしれません。

では、この気密を作るためにどんなことに気を付けて施工しているか…ということを次回で説明したいと思います。
小野
2016.04.26
最近聞きに行ったセミナーの話をふたつ…まずは堅い方の話から。すでに平成25年度から運用されている制度ですが、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」という国の仕組みがあって、その平成28年度版の説明会に参加してきました。

これは、国の定める要件を満たす住宅の改修工事に対して補助金を出してくれるという仕組みでして、最近新聞などでもよく見かけるようになった「良質な中古住宅の流通」とか「リフォーム市場の拡大」などを目的とした事業です。

で、その要件なんですが、まずは既存の住宅をインスペクションすること…聞きなれない言葉ですが、要は事前に検査をするってことです。その検査をするのにも「インスペクター」という資格が必要になりますが、四季の家工房の場合は梅村がこの講習を受けていますのでここはOK!次に、改修後の住宅は長期優良住宅と同等の性能を有してなくてはいけません。その中で住宅として求められるのが、「劣化対策」「耐震性」「維持管理・更新の容易性」「省エネルギー対策」の4項目となります。

項目として挙げるのは簡単なのですが、既存の住宅でこれらの基準をすべて満たすためのリフォームっていうのは、正直言ってけっこう大変な工事になります。詳細については説明しだすときりがないので省略しますが、これらの基準に適合できてるってことを証明するために、事前に認定を受けなくてはいけないわけで、その設計上の技術的な内容や事務の流れなど…このあたりがセミナーの中心内容でした。

これらにプラスして、「リフォーム履歴」を残すことと「維持保全計画を」立てること、これらを全て満たしてようやく着工できる流れとなります。当然ながら手続きも煩雑で、揃える書類のボリュームも結構な量になるのでしょうが、原資はもちろん我々の税金なので当然といえば当然ですね。ですから着工前の計画段階ではけっこう時間もかかりますので、その分も見越してご依頼をいただくことになります。

気になる補助金の金額ですが…通常の長期優良住宅化リフォームで、1物件当たり100万円が限度額になります。もうひとランク上の仕様にS基準という200万円までもらえるものもあるのですが、こちらはかな〜り厳しい内容となります。それと、三世代同居のためのリフォームを行う場合は、50万円の加算が受けられます。

もう一つのセミナーは、「未来住まい方会議」というタイトルのゆるい系の話です。表面的にはゆるいのですが講演の内容は濃く、いろいろと感じることや共感できることもあったのでご紹介しておきます。こちらは「YADOKARI」さんと言う、スモールハウスやタイニーハウスと呼ばれる小さな家を専門とする建築屋さん…と思っていたのですが、建築屋と言うよりも住まい方を提案するクリエーターさんのお話しでした。

もちろん、小さな家の販売もしてみえるそうですが、話をきいてみると売ることが最終的な目的ではなく、お金や物に縛られない生活っていうことを突き詰めていったら、暮らし方がミニマルになった…と言う感じでしょうか。

もともとは建築とは全く関係のないITを専門としているとのことで、IT企業に勤めているときに感じた「時間やお金の使い方」に対する疑問を掘り下げていくうちに「小さく暮らす」という形が見えてきたそうです。その中で「問題解決型」ではなく「おもしろい」ということをキーワードにして現在の活動の原型ができたそうで、その後はさすがITの人ですね…変幻自在というか周囲を巻き込みまくって、ひとつのムーブメントを形成しています。

こういう動きって不思議なもので、どこかでそれまでの概念を覆すようなムーブメントが起こると、世界のあっちこっちで同時多発的に同じような現象が起こります。近年はITも手伝って情報の伝達速度も速くなりましたがITがない時代であっても、せいぜい5年とか10年とかの時間差の中で同じように考え方や価値観って伝搬するもんです。ショーワな僕にはその辺の感覚がよくわかるのですね。

当然ながら価値観は人それぞれ多様ですし、この「小さく暮らす」というライフスタイルが今後本流になるとは思いませんが、10年後、20年後にこういう暮らし方をしている人たちが世の中に認識され、現時点ではある意味「変わり者」と呼ばれるかもしれない人たちが、普通に暮らせるようになっていることと思います。

もちろん、従前の価値観も残ると思いますし、例えば、「じゃあ、仏壇はどうするの?」みたいな疑問も出てくると思います。「ミニマル」という一言で切って捨てられるような単純なことではなく、日本人が培ってきた文化であり、精神的に帰依する大切な場所でもあります。

そう思ったときに僕なりにまた考えが広がってくるのですが、「ご先祖様」イコール形としての「仏壇」ではないかもしれない、あるいは仏壇という形は必要かもしれないけど、ウルシ調の塗装が施され、4枚の折れ戸があって、開くと須弥壇があって…という、いわゆる「仏壇」の形である必要はないかもしれません。

いやいや、やっぱり仏壇は仏壇らしい形をしていないと心がすさむ…と言う意見も出てくるでしょうし、それもまた正論です。いやいや、いやいや、そもそも仏壇が各家庭に置かれるようになったのは昭和になってからの話であって、庶民の文化としては歴史は浅いのである…なんて意見も出てくるはずです。

僕は新しい考え方や古い概念を覆すっていうことに抵抗はないのですが、既存の考え方や物の形にはそれなりに意味があり、しかも長い年月を経て出来上がったそうしたモノたちには敬意を払うと言うか、ある意味「畏怖の念」さえ感じます。そのあたりを理解・熟考せずに変えていくと、それはただぶっ壊しているだけになってしまと思います。

仏壇はほんの一例であって、日本の家には目に見えないギミックがいっぱい詰まっているんです。だから「おもしろい」ことをやるって、簡単なようでけっこう奥が深いし責任のある行為です。「おもしろい」ことをやってお客様に喜んでいただければ、それはモノ作りの仕事をする者としては最高ですけどね!

すごく脱線しましたが、おもしろい話を聞くと、そこからまたいろいろイメージが膨らむので「おもしろい」のです。僕も一人の「おもしろがりやの人間」として、YADOKARIさんのお話には大変共感することが多かったです。

今回のYADOKARIさんのセミナーを企画したのは、先日大垣市荒川町にて「日々乃えん」と言うレンタルスペースをオープンした「大垣で楽しむ会」の皆さんです。で、この「日々乃えん」の場となる古民家を橋渡ししたのが、四季の家工房もメンバーの「岐阜・楽しい家づくり研究会」でした。そんなご縁で参加してきました。
小野
2016.04.12
「山県まるごと市」へお越しくださった皆様、どうもありがとうございました。大盛況だったみたいですね。だったみたいって…スミマセン、実は僕は他の用事があって当日は参加できなかったのです。その分、下準備でだいぶ協力させていただいたんで、縁の下の力持ちってことで今回は勘弁していただきました。

まな板の販売どんな感じだったかちょこっとご紹介させていただきますと、四季の家工房としてはいつもの「まな板屋」さんとして出店しましたが、それよりなにより子供たちのハートをとらえてしまったのが「かんなプール」ですね。

僕たちにしてみればいつも見慣れたかんなくずなんですが、それでも4メートル四方のプールにしたらけっこうな大迫力で、子供が大暴れしたくなる気持ちもわかるってもんです。4メートル四方って、8帖間より広いですからねえ〜。
かんなプール かんなプール かんなプール
しかも、搬入時にはトラックの荷台から溢れんばかりで、シートをかけてようやく運んだんですが、「ほしい子は持って帰っていいよ」ってことにしておいたら、ぜ〜んぶきれいにさばけちゃってなんと帰りはカラ荷です!丸めたりヨリあわせたりいろいろ遊べますし、最後はネット袋に詰めてお風呂に浮かべれば「桧風呂」も楽しめます。

モニュメントツリーの方は、こちらも木の端材を用意しておいて、それに参加の皆さんからコメントを書いてもらって、木にぶら下げてみんなで作り上げようってコンセプトなんですが、これもご覧のとおりきれいに花が咲きました。

モニュメントツリーって言っても実際は立木が枯れちゃったのをもらってきて台に据えて立てているだけなんで、まぁそれを言っちゃぁ元も子もないんですが、とにかく搬入した時点ではなんとも寂しい木だったんですね。僕も作りながら「こんなんでええんかなぁ〜」と内心心配してたんですが、なるほど…こういうことだったんですね。
モニュメントツリー モニュメントツリー モニュメントツリー
他にも開催模様の写真がありますんで、よかったらこちらもご覧ください。
山県まるごと市(facebookページ)
小野
2016.04.07
山県まるごと市告知です。今度の土曜日…4月9日ですが、山県市の四国山公園香りドームにて「山県まるごと市」が開催されます。地元の実行委員会で開催する手づくりイベントです。

どんな内容かと言うと…実は僕もよくわかっていないのですが…食あり、物販あり、体験あり、といった盛りだくさんイベントで、どなたでも参加できます。四季の家工房もいつものまな板を持って出店しますが、今回は地元イベントとあって自分の出店だけではなく、いろいろと協力させていただいています。

その一は、大量のカンナくずを集めてきて、巨大な「カンナプール」を準備しました。トラックがてんこ盛りになるほどのカンナくずは、すでに昨日搬入して出番を待つばかり…。

当日は角材で組んだ8帖間ほどのプールを作り、そこになみなみにカンナくずを広げて自由に遊んでもらおうって企画で、子供たちの「あそび」に真剣に取り組んでいる「十色(といろ)」さんと言うNPO法人からのご依頼です。(ちなみにこの十色さん、毎年キッズスタジオの受付を手伝ってくれている方たちです。) カンナくずがほしい人はお持ち帰りもできますよ!

その二は、自然木のモニュメントを作りました。造園デザインのリビングデザインの本田クンにお世話になって、3メートルほどのハナミズキをもらってきて、それを会場に自立させるんです。で、その枝に「30年後も住みたいまちへ」という思いを書いた木のプレートをぶら下げて、みんなでモニュメントを完成させようって企画です。もちろん山県市以外の方でも参加OKです。

四季の家工房のまな板は、地元のイベントってことで今回は20%OFFで販売しますよ〜!他にも、端材詰め放題とかもやってますので、ぜひあそびにきてください!
小野
2016.03.24
このところ通っている現場は、ちと遠いのです…。具体的な場所は申せませんが、岐阜県のお隣…愛知県の名古屋市です。なので必然的に毎日のように高速道路を利用することになりますが、新築工事にような長丁場になると高速料金もばかにならないですね…。「高速代半額」があった頃はまだ良かったのですが、2014年の春に終了してしまったんですよね〜。

なんといっても一番速いのが、最初から最後まで高速道路を使うフルバージョンで、高〜いけど速い!作業場から1時間ちょっとで現場まで着いてしまいます。気になる高速代はと言うと…東海環状道の広見ICから名神高速の一宮ICまで1070円、一宮ICから名古屋高速16号一宮線で清州東JCまで360円、そこから名古屋第二環状で510円、合計1940円もかかってしまいます。

往復で3,880円です。本来だったら現場までは1時間で着きたいのでこのルートなのでしょうが、100日通ったとして388,000円…なかなか強烈な金額です。乗り合わせとか無駄な動きをなくすとか、心して移動しなくてはいけないですね。

僕の場合、打ち合わせとか荷受けとかほんのちょっとしたことでも現場に赴かなくてはいけない時が結構あるのですが、時間さえ余裕があれば他の行き方をしても良いので、別バージョンのルートも考えてみました。半分一般道を使うルートで、早朝の比較的空いている時間帯ならば、国道22号線で一宮まで走り、そこから乗れば870円で済みます。所要時間は30分ほど増えますが、高速代が半分以下になるのはありがたいです。

もうひとつ、まったく別ルートも考えました。関からバイパスの国道248号線、国道41号線を使って、その先は数年前に無料化となった尾張パークウエイ経由で中央高速の小牧東ICから高速道路に乗ります。そのまま名神に入って名古屋ICで降りて、名古屋第二環状の真下を並行する国道302号線で現場まで。美山の作業場からだと遠回りですが、自宅のある関市からだったらこのルートもありです。なにせ高速代が730円だけで済むので最安ルートです。

それと、このルートは一番景色が良いのです。尾張パークウェイは中央高速から明治村、リトルワールド、モンキーパークなどを経て犬山までつながる観光のアクセスルートなのですが、里山の中を抜けるとても気持ちの良い道路です。景色が良いのは周りの里山の風景が良いということもあるのですが、単にそれだけでがなく景色と道路がとても良くなじんでいると思うのです。広葉樹林の丘陵地帯に絵筆ですぅ〜っと線を引いたように、自然な感じで道路が走っているとでも言えばよいのでしょうか…。

最近の高速道路のように、山を切ったり盛ったりして地形を変えてまで道路を通すような力づくの感じでもなく、アップダウンやカーブに任せるように緩やかに走っている感じです。コンクリートの法面なんかがない分、周りの木々がとても近くにあります。この道はすでに通い始めて一か月ほどになるのですが、最近木々の新芽が膨らんできているのが遠くからでもわかります。この先、若葉、新緑、青葉の頃まで通うことになるのかな…楽しみが増えました。

現場で、どんな現場かっていうと、現在こんな感じです。基礎ができて、土台を取り付けて、基礎内に雨が入らないようにブルーシートで全面を覆っています。基礎の外部にもブルーシートを敷いて、上棟後の建物に泥を運ばないように細心の注意を払っています。

建築現場って不思議なもので、汚れに対して無頓着でいると次に入った職人さんはさらに無頓着になっていき、悪循環でぐちゃぐちゃな現場になってしまいます。でも、最初がきれいだと後から入る職人さんも現場をきれいに保つよう気にしてくれるようになるのです。程よい緊張感って大切です。

来週はいよいよ上棟です!
小野
2016.03.04
今年も「つながりフェスティバル(通称つなフェス)」に出店いたします。日程は3月13日の日曜日、場所は岐阜市の金公園です。

無垢のまな板四季の家工房の売り物はもちろんいつもの「まな板」、というか「変なまな板」です。現在、製作の追い込み中です。今回も大小あわせて100数十枚は持ち込めると思います。
無垢のまな板こちらは製作途中の模様です。エッジを仕上げて表面の荒仕上げが終わったところです。ぱっと見、けっこう平滑に見えると思いますが、これはまだまだ序の口でこの後にわざと黒い筋をつけて、その筋が消えるまで中仕上げで研磨します。黒い筋は「これが消えたら均等にサンダーがあたってますよ」と言った目印になるのです。

そして、水で濡らして乾かして、最終的に仕上げの研磨を行います。…なんで水で濡らす??のかと言うと、研磨中にできた目に見えないへこみや、サンダーの圧力によって押さえつけられた木の繊維を、水分を与えることによってもう一度復元させるのです。

木って繊維の集まりなので、水分によって本来の形に戻ろうとする性質があるのです。ずぶ濡れにさせる必要はなく、きれいな布巾で軽く水拭きするだけで、それまで平滑だった表面があら不思議!ザラザラになっています。乾燥後に細かい仕上げサンダーでここを軽くなでる程度に仕上げ研磨すれば、研磨の工程はおしまいです。

最後にクルミオイルでフィニッシュです。食べる物を載せるまな板だから塗装も食べられるもので…と言うこだわりで、クルミオイルを使っています。このオイル…塗料屋さんで買うんではなくカルディで買うんで、まさに食品なのです。

2日間の乾燥時間をおいて2回塗りしますが、塗膜としてはそんなに強いものではないので、日常的に使うと徐々に塗装はなくなってきます。でも、そのまま使ってもらって問題ありません。もし気になるようならオリーブオイルなど身近にあるものでよいので、うす〜く塗ってあげてください。

では、「つなフェス」をお楽しみに〜!!
小野
2016.01.08
今年最初のお引き渡しは、昨年末に竣工して見学会をやらせていただいた美濃加茂の住宅です。お引き渡しと言うと完成した建物をお客様にお渡しすることなのですが、「お引き渡しって具体的に何をするの??」「何をもってお引き渡しとするの??」ってのが割とわかりにくいみたいで、よく聞かれます。

建築屋さんによって多少内容は異なるでしょうが、四季の家工房の場合はだいたい次のような内容になっています。まずは、お引き渡しする建物が契約通りにできているか、キズや不具合はないかどうか、双方立会いのもとぐるっと見て回ります。この時、何か気になることがあったら遠慮なくお申し出ください。直せることならすぐに直しますんで。

僕たちも事前に念入りに点検はしているので、よっぽどのことがなければそんな大きな問題は出てこないのですが、お客様の目で確認していただくってことがとても大切です。もちろん建物は住んでみなけりゃわからないってことも結構あるので、この時の点検が最終ってわけではないですよ。住まいの住み手と作り手は末永くお付き合いってのが原則ですから!

次に書類のお引き渡しをします。完了検査の済証、保証証関係、取扱説明書、その他にも長期優良住宅などの場合はその認定書や検査証など、補助金を受ける場合はその関係書類などなど、ケースバイケースです。

工事報告書それと、四季の家工房が独自に記録した工事報告書もお渡しするのですが、これがちょこっと自慢の品なのです。だいたいいつもA4サイズの用紙で百数十枚…写真の点数でいうと数百枚になるのですが、基礎工事から竣工までをまとめた建物の全記録です。

例えば柱や梁と言った木造の主要な接合部分に取りつく補強金物は漏れなく全箇所を写真に収めてあったり、窓周りや設備配線などが外壁を貫通する部分の防水措置なども全箇所記録してあります。

又、基礎に打設したコンクリートの配合や、生コン工場を出荷した時刻、現場に到着した時刻、打ち込んだ容量など、出来上がってしまってからは見えなくなる部分に関しては特に細かく記録を残すようにしています。

その他にも、搬入された材料の仕様や寸法、取り付け方、日常の作業風景など、まとめるとこのくらいのボリュームになってしまうのですが、ここまで細かく記録している建築屋さんどれくらいみえるでしょうか?ってくらい自慢できるものなのです!

工事用キーで、最後に鍵のお引き渡しです。どのメーカーの玄関扉でも「工事用キー」と言う仕組みが組み込まれています。これは工事中の施錠はこの「工事用キー」で行い、引き渡しの時に「本キー」を鍵穴に差すことによって「工事用キー」の使用ができなくなる…という優れものです。

お引き渡しの瞬間までこの「本キー」は封印された専用の袋の中に保管されていて、お客様立会いのもとにこれを開封して鍵穴に差して、施錠の状況を確認してもらいます。次に「工事用キー」を差してみると…あら不思議!「工事用キー」はもう回すことすらできなくなってます。

これがお引き渡しの儀式としてはクライマックスとなります。ついさっきまで僕たちの職場だった場所が、この瞬間にお客様のお住まいになるのです。ここから先は「おじゃまします」と言って上がらないといけないんですね。

お引き渡しの準備は基本的に僕たち作り手側がやるのですが、一つだけ準備しておいていただかなくてはいけない大事なことがあります。それは火災保険への加入です。工事期間中は建築工事保険でカバーしているのですが、お引き渡し以降はお客様の管理になるので、保険の空白期間ができないように気を付けてください。

…余談ですが、たまに「どういう服装で行けばいいですか?」なんて質問もいただいたりしますが、「普段着で結構ですよ。もし、ネクタイ着用がご希望でしたら僕たちもそれなりの服装で伺いますが…」とお答えしています。ちなみに、僕たちはいつも作業着です。作業着が僕たちの正装ですから…って最初に言ったのは本田宗一郎でしたね!
小野
2016.01.01
あけましておめでとうございます。

住宅に関する国策が大きく舵を切り、消費税も導入間近…私たちを取り巻く環境は大きく変化し続けています。

しかし、四季の家工房では「木を削って組み立てる」という手仕事と、木に対する心構えをいつまでも大切にして今年も頑張りたいと思います。今年もよろしくお願いします。
小野